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腎臓内科医の診療日記 No.76

何年も前からテレビは見なくなってしまって、最近始まったオリンピックも、元々野球やサッカーなどのスポーツ観戦に興味が無かった延長で、まったく見ていない。一方で、妻や2人の娘は次々と放送されるオリンピック番組を楽しそうに観ていて、大変盛り上がっている。我が家のリビングルームのテレビでは、昔からうるさいバラエティ番組がついている事が多く、妻と娘は番組をみながらケタケタと笑っている。自分がもし観るとしたら、旅行や自然、歴史などをテーマにした静かな番組が好きなので、まるで嗜好の異なる明るい家族の中で私はどんどん孤立し、陰が薄くなっていく。家の中の地縛霊に、ずいぶん近づいたんじゃないかと思う。飼っている室内犬が私に向かって吠え続けるのも、この世の存在とは異なる何かを感じて怯えているのだろう。ひょっとすると私の部屋などは、既に心霊スポット扱いされているかもしれない。

10年近く前、瞑想方法を学ぶ機会があって、それなりに継続していたらちょっとした心霊体験をした。最初はゾッとしたが、調べてみると、「魔境に入る」とか「神秘体験」とか言われていて、瞑想を継続している時におきうる現象として知られているようだ。瞑想は、きちんと継続する事によって、自分自身の様々な能力が向上したり、恐らく病気の元となる溜め込んだ古いストレスが浄化されるなどの様々な効果があると「言われていて」、近年では企業研修や治療プログラムに取り入れるところも出てきている。私も自分の経験から、誰でも若いうちから瞑想習慣を身につけておくと良いだろうと思うが、そんな知識を得る機会がなかったり、最初から怪しいと決めつけていたり、やってみても短期間では効果が実感できないので途中でやめてしまったり、トラウマが解放される過程で浮上する心理的危機(≒マイナス感情の再体験)から逃げてしまったりなどで、継続できない人も多い気がする。きちんと継続出来れば、多くの慢性的な心身の病気について、良い方向の作用が期待出来るんじゃないかと本気で考えている。病気に対する治療として「統計学的に効果が認められて、多くの医療従事者に認知される」のはまだ先で、「一般的に行われる治療」になるのはずっと無理かもしれない。

リアルタイムで放送されている番組をテレビで観ることは無いけれど、ネットのサブスク契約だとNHKの過去の番組を好きな時に観る事ができるので、そのチャンネルを以前から契約している。その中で好きな番組がいくつかあって、「72時間ドキュメント」は、何年も前からずっと観ている。1番最初は2006年秋から半年の放送で、その後2013年に放送が再開されてから10年以上続いていて、ファンも多いのだろう。特定の場所で 3日間に渡ってロケを行い、そこを訪れる人々の日常を丁寧に紹介し、すべての人の人生をありのままに受け容れていく。一日の終わりに暗い部屋で1人、プロジェクターで大画面スクリーンに番組を映してみていると、燃え尽きかけた中年男性に対する癒し効果は、とても高い。この番組には、ノーベル平和賞をあげてもよい。