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腎臓内科医の診療日記 No.72

社会の過剰な「不適切」を題材にしたドラマがとても面白くて、毎週楽しみにみている。テレビドラマは、自分が面白いと思う戦国時代や幕末の大河ドラマ以外は元々あまり見ようと思わないので、他の面白いドラマを色々見落としている可能性は高いが、個人的には久々のヒット作品である。人気ドラマなので内容を知っている人も多いと思うが、1986年から現代にタイムスリップしてきた中年男性が、現代社会で許容されなくなった様々な「不適切な」出来事に遭遇して「こんな窮屈な社会、オカシイんじゃねーの?」と絶叫する話である。それに加えて昭和末期を感じさせる小ネタが満載で、自分の少年時代に実際に経験した世界がそれなりに正確に再現されているので、胸がキュンキュンする。

先日、救急病棟の患者さんで、寿命が迫っている方が頻繁に痙攣をおこしていたので、痙攣を抑える薬を使い始めた。痙攣もそれなりに落ち着いたので、一般病棟に部屋を移して穏やかに終末期を迎えてもらおうと思ったら、一般病棟を管理する看護師さんから「その薬はリスクの高い薬なので、薬の使用について家族の同意を得てから一般病棟に移ってください」と言われた。薬は昔からある使い慣れている薬で、以前はそんな事を言われたことはなかった。家族に電話をかけて必要な事を伝え、一般病棟に入れてもらうことができた。医者になったばかりの頃、医療行為の際に本人や家族の同意が必要とされる行為は、手術同意書、輸血同意書、造影剤同意書くらいであったが、最近は抑制の同意書、中心静脈確保の同意書、血液を研究に使う場合の研究同意書など、同意を得る必要がある行為が増え、同意書に書いてある内容も膨大なものになった。一部の「強力な」抗生物質を使うときは使用届を作成し、褥瘡(床ずれ)が出来たら褥瘡発生届を作成し、患者が亡くなったら予期していた死亡かどうかの書類を作成する。患者側に手渡される同意説明文書の量や、書類の作成に要する時間や手間は、膨大なものとなった。たぶん、何か医療現場でトラブルがあるたびに、解決策としてルールを次々に決めていった結果だろう。現場のトラブルは無くならないので、これからも次々に新しいルールや書類が増えていくのだろう。

冒頭のドラマの中で、登場人物の中学生がファミコンのカセットの端子に、息を吹きかけていた。映像をみていた私の前に、同じことをしていた少年時代の自分がよみがえり、思わず抱きしめそうになった。これから色々あるけれど、ちゃんと乗り越えて半世紀オジサンになっても楽しく生きているから、頑張ってくれ少年。出来たら若いうちから運動したり、旅に出たり、瞑想したりして、自分を大切にする習慣をつくっておくと、もっと人生を楽しめるぞ。そのうち、キレイなカミさんと結婚して、かわいい子供が3人出来るから楽しみにしておけよ。バイクで日本中を走り回ったり、自分で料理したり、遠方までコンサートに出かけるのも楽しいぞ。カミさんは、おっかないけどしっかりしているし、大学生の娘と二人でグアム旅行に行ってドライブしたりして楽しいぞ。そうそう、重要な事を伝え忘れるところだった。2008年に日経平均株価が7000円を切ったときが底値で、2024年には40000円を超えるから、たっぷり仕込んどけよ。