糖尿病と運動療法
糖尿病と運動療法①
糖尿病患者は高血圧、高脂血症、肥満等を伴っている場合が多く、運動療法によってこれらの異常が改善されるとともに血糖コントロールも改善することが知られています。糖尿病治療において「運動しているから食事療法はしなくてよい」とか「食事療法をしているから運動しなくて良い」というものではなく、運動療法は食事療法と組み合わせることによりさらに高い効果が得られます。また「運動療法」ではなく、日常生活において身体活動を増加させることも効果的です。このように糖尿病の治療においては食事や運動など生活習慣の改善が重要であり、基本的治療として、日常生活で段階的に運動量を増やしていき、それを継続することが重要であります。
糖尿病と運動療法②
糖尿病患者の血糖値の改善は運動後12~72時間持続しますので、運動は毎日、少なくとも1週間のうと3~5日間行うことが勧められます。たとえば、体重60kgの人では1日に50分程度のウォーキングまたは20分程度のジョギングを週5日行った場合、運動による消費エネルギーは1週間に約1000キロカロリー程度となります。最近は、レジスタンス運動の有用性が注目されています。レジスタンス運動とは、スクワットや腕立てふせなど、筋肉に負荷をかける運動のことで、レジスタンス運動が、筋肉量や筋力を増加させるとともにインスリン抵抗性を改善し、血糖コントロールを改善すると考えられています。週に2~3回、8~10種類のレジスタンス運動を10~15回繰り返すことより開始し、徐々に強度や回数を増加させていくことが推奨されています。
糖尿病と運動療法③
心血管疾患のある場合やそのリスクが高い場合、また、明らかな網膜症や腎症、神経障害の存在する場合は激しい運動をすることによって、合併症がひどくなる場合があります。
運動する前に主治医とよく相談しましょう。軽めの運動をお勧めします。高齢者や肥満のかたにおいては腰や膝の整形外科的疾患を患っている場合が少なくありません。このような場合では、レジスタンス運動などにより筋力の増強を図るとともに、水中歩行、椅子に座ってできる運動、腰痛体操を奨励します。
糖尿病と運動療法④
運動すると血糖は低下するのでしょうか。健常者では中等度の強度の運動を行った場合、血液中のブドウ糖は骨格筋に取り込まれ利用されますが、インスリンの低下などにより肝臓での糖産生が増加することにより血糖値はほとんど変化しません。健常者の場合運動による低血糖発作は起きません。
ですが、糖尿病患者でインスリンや血糖降下薬で治療を行なっている場合、低血糖を生じることがあります。ですから運動前のインスリンの量を調節する必要があります。
また、食前よりも食後の運動のほうが低血糖の予防になるでしょう。