新しい糖尿病の治療薬
新しい糖尿病治療薬①
今年4月に新しい糖尿病治療薬が発売されました。SGLT2阻害薬とういもので、腎臓での糖の再吸収を阻害し、尿から糖の排出を促進する働きをもちます。尿から糖を排出する事によって体内の糖を下げようということです。この薬は血糖を下げることで知られるホルモンであるインスリンを介してはおりません。即ち理論上はインスリンに関係なく血糖をさげるものと考えられますが、保険上は2型糖尿病患者(インスリン分泌がある患者)のみ使用となっています。
新しい糖尿病治療薬②
SGLTとはナトリウム・グルコース共輸送担体のことで細胞膜の表面に存在し細胞の外にある物質を細胞内に取り込む仕事をします。SGLTには大きく分けて2種類あり、SGLT1とSGLT2があります。SGLT2は主に腎臓にあり、尿中の糖を再吸収し、体内に糖を取り込みます。SGLT1は主に小腸に存在し、食事からの糖を吸収します。1835年にリンゴの樹皮からフロリジンという物質が発見されました。このフロリジンは尿糖の排出促進作用があることが知られましたが、副作用がひどい等により薬として使われることはありませんでした。その後医学の発達によりフロリジンがこのSGLTを阻害する事により尿糖が促進する事が明らかにされました。その後フロリジンが改良され、SGLT2のみを阻害する薬が開発され臨床に応用されるようになりました。
新しい糖尿病治療薬③
SGLT2阻害薬を服用すると一日約70gの糖が尿から排出されるとのことです。カロリーに換算すると約300キロカロリーの喪失となり、ある意味やせ薬の効果があります。実際この薬を始めると約3kgの体重減少があります。また、糖が喪失される分、その代わりに脂肪をエネルギーとして消費しますので、中性脂肪が下がります。以上の作用がありますので、太った患者には効果があります。若くして太っていて食事がなかなか守れない患者にはこの薬のよい適応だと思います。逆に高齢者でやせている患者にはさほどの効果が得られないと思います。
新しい糖尿病治療薬④
SGLT阻害薬は強制的に尿から糖を排出する薬ですので、尿の浸透圧が高くなるための尿の量が以前より増えます。そのため体内の水分が減るため脱水を引き起こすことがあります。ですから水分を十分に摂取してください。のどの渇きを訴える患者もいます。また、尿が甘くなるため、泌尿器器官に菌がつきやすく、尿路感染症になりやすくなります。ですがら清潔に保つことを心がけましょう。また、この薬の副作用として皮疹が出現することがしばしば報告されています。服用し始めてすぐに皮疹が現れるとのことですから、服用して皮疹が現れたならば薬は内服を中止してください。このように副作用が現れることのある薬ですので注意しながら服用しましょう。
新しい糖尿病薬⑤
2014年4月に発売されたSGLT2阻害薬ですが、使用した患者10人が死亡していたことが判明しました。事態を重く見た厚生労働省はこのことを発表し、薬につけられる添付文書の改訂を指示しました。死因として重度の脱水が考えられ、適度な水分補給を行うよう指導すること、さらに脱水による脳梗塞例も報告されたので、脱水が血栓、塞栓症に至りやすいことに改めて注意を喚起するようにとしています。また、発熱、下痢、嘔吐がある場合ないし食思不振で食事が十分摂れない場合には万全の注意が必要であり、SGLT2阻害薬は必ず休薬する。この点も患者に予めよく説明しておくこととのことです。この薬を服用する場合は十分に注意しましょう。