糖尿病と食事療法
糖尿病と食事療法①
食事療法はすべての糖尿病患者において治療の基本であり、出発点です。食事療法の実践により、糖尿病状態が改善され、糖尿病合併症のリスクは低下します。個々人の生活習慣を尊重した個別対応の食事療法がスムーズな治療開始と持続のために必要であり、そのためには食生活の内容を始め、食事の嗜好や時間などの食習慣、身体活動量などが必要です。血糖値、血圧、血清脂質のコントロール、体重の推移、年齢、性別、合併症の有無、身体活動や、従来の食事摂取量などを考慮して、摂取エネルギー量を決定します。肥満者や高齢者では少なめにエネルギー量を決定します。
糖尿病と食事療法②
摂取エネルギー量算定の目安としては、その人の身長から標準体重を算定します。以下の式から算定します。
標準体重(kg) =[身長(m)]×[身長(m)]×22
摂取エネルギー量(一日) =標準体重 × 25~30
このようにしてその人の摂取エネルギー量を算定します。目安として身長160cmだったら1440Kcal/日、150cmだったら1200Kcal/日です。肥満があれば減量を考慮して少なめに摂取エネルギー量を算定します。自分の一日の摂取エネルギー量を知っておきましょう。
糖尿病と食事療法③
すべての糖尿病患者にとって食事療法は糖尿病治療の第一歩です。長年にわたる個人それぞれの食習慣を加味した個々の食事指導が必要とされます。血糖、血圧、脂質、体重の推移、年齢、性別、合併症の有無やエネルギー消費(身体活動)などを十分に評価して、摂取エネルギー量を調節する必要があります。肥満者や高齢者においては、摂取エネルギー量を低く設定することが多いです。個人個人において適切な体重は異なりますので、過去の体重歴や現在の状況を考慮した目標体重を設定し、良好な血糖コントロールを保てる体重を維持することが重要です。過度の摂取エネルギー制限は途中で脱落することが多いです。
糖尿病と食事療法④
炭水化物(でんぷん)の摂取は最近ではかなり制限したほうが良いという報告もありますが、まだ結論にはいたっておりません。摂取カロリー全体の約6割以下におさえることがいいでしょう。バランスのよい食事をするのが望ましいです。炭水化物はいろいろなタイプの糖がありますが、さほど種類にはこだわらず、摂取した方が多いか、少ないかが問題となります。菓子、ジャム、清涼飲料はショ糖を多く含みますので、血糖値および中性脂肪を上昇させるので、なるべく少なくすることが良いでしょう。果物(果糖)は肝臓でブドウ糖に変換し血糖値を上昇させるため食べ過ぎてはいけません。
糖尿病と食事療法⑤
タンパク質の摂取量については大体、標準体重1kgあたり1.0~1.2gが目安です。タンパク質が動物由来か植物由来かは問われません。糖尿病性腎症が進行した場合は、タンパク制限が必要になってきます。脂肪については、飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸に関しては摂取エネルギー量の10%以内におさめることが推奨されています。ただし、魚油に多く含まれているEPA、DHA、一価不飽和脂肪酸は、血糖値や中性脂肪を下げる作用もあり、制限の必要はありませんが、摂取エネルギーには含めてとりすぎには注意してください。
糖尿病と食事療法⑥
糖尿病の合併症の発症や進展防止には血糖のみならず血圧のコントロールも重要です。
食塩の過剰摂取は血圧上昇に作用し、食欲を亢進させるので、多くとも1日10gとしましょう。高血圧を合併したものでは1日6g未満、尿蛋白が陽性の腎症を合併した場合では1日7~8g未満に制限しましょう。また、食物繊維は血糖コントロールの改善に有効であり、血中脂質のレベルも低下させます。野菜を1日300g以上摂取することを目標にしましょう。アルコールの摂取に関しては低血糖を引き起こす危険があるばかりでなく、多飲する場合、治療に悪影響を及ぼすので、できるだけ禁止することが望ましいです。1日25g程度を上限の目安とし、毎日は飲酒しないようにしましょう。