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腎臓内科医の診療日記 No.70

最近、クソリプという言葉を、よく聞くようになった。クソリプとは、主にX(旧twitter)やインスタグラムなどで、誰かが投稿した発言に対して、それを読んだ人が書き込んだ意見の中で、解釈が的外れだったり、発言者の気分を害するような悪意のある言葉が含まれている返信のことで、クソ(ウ〇コ)みたいなリプライ(返信)の略である。このネット用語は、2020年頃から使われ始めたようで、丁度コロナ騒ぎの真っ只中で、私が応援していた「コロナで大騒ぎするのはやめた方がよい派」の医師やジャーナリストの真っ当な発言に対し、「コロナ脳の専門家や、洗脳された一般人」がクソリプを並べたてて、激しい論戦となっていた。私には「コロナ脳」側の人の発言がクソリプにみえたのだけれど、先日そちら側のリーダー格の教授が、「反コロナ、反ワクチン派」の発言を総じてクソリプと称していた。その教授は「悪質なクソリプ」を送ってきた何人かに対し、訴訟を起こしたそうである。日本でも、ようやく騒動が収まってきて、電車の中でも素顔の人が多くなってきたが、見えにくいところで人々は分断されたままである。ちなみに、派生語として「クソリプおじさん」という言葉もあって、他人の発言に批判を繰り返して自分を正当化したがるのは、何かの理由でヒネクレてしまった哀れなGGIが圧倒的に多いけれど、時々BBAもいる。

一般の人からすると怖い話かもしれないが、ある病気の患者を前にしたとき、医者によって評価や方針は結構分かれる。医者にもいろいろなタイプの考えの人がいて、日々勉強して新しい検査や治療を次々取り入れる人もいるし、新しい事に慎重な人もいる。患者の体の異常をすべて治そうとたくさんの薬を使う人もいるし、些細な変化には目をつぶって、最低限の治療を行う人もいる。患者の心理状態を考えながら方針を立てる人もいるし、自分の立てた方針を患者の気持ちより優先する人もいる。私は大抵の場合、どんな方針も「明らかに間違っているとは言えない」と思うので、まずは患者を良く知る主治医の方針を尊重するのが大事で、主治医でない者が口を挟むのは最低限にした方がよいと思っている。指摘するのは単純なミスや思い込み、法的に問題となりそうな部分だけで十分で、それなりに考えられた主治医の方針に対して、クソリプは飛ばさない方がよい。

ローリングストーンズが、昨年10月に新しいアルバムを発表した。ストーンズは私の生まれる10年以上前の1962年から活動していて、ビートルズと並ぶイギリスの伝説的バンドでありながら、60年以上活動を続けている現役のバンドでもある。私はストーンズの音楽にそこまでハマった記憶はないけれど、「悪魔を憐れむ歌」、「ギミーシェルター」、「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」なんかはやっぱり好きで、この年になるまで200回以上は聞いていると思う。ミックは7年前の73才の時に、当時29才の恋人との間に8人目の子供をつくり、昨年は80才のミックがステージの上を駆け回って、満員の観客を扇動するライブ映像が、投稿者の「かっこ良すぎる」というコメントとともにSNSで拡散された。私も素直に、漢(おとこ)の鑑だと思った。ミックの人生が本当のところはどうだったのか知らないが、人からの評価や批判などは気にせず、自分が本当に楽しめる事が何なのか考えて、頑張って楽しく生きていこうと思った。オジサンの残りの人生は、たぶん思っているほど長くはなくて、油断をしていると、あっという間に何もしないままサヨウナラなので、誰かにクソリプを飛ばしている暇なんかないし、自分に向けられたクソリプに傷ついている暇も無いのである。すべてのオジサンは、ミックジャガーを目指した方がよい。