糖尿病と肥満
糖尿病と肥満①
肥満とは体脂肪が過剰に蓄積した状態のことで、肥満症とは肥満により健康障害を生じたか、あるいはそれが予測される状態のことであります。糖尿病に肥満が合併した場合、減量が必要になってきています。肥満者の場合、インスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)が増大しており、そのため、インスリン分泌が増加します。しかし、徐々にインスリン分泌が枯渇し、減少します。そのため肥満のある糖尿病患者の体重をそのままにしておくことは糖尿病状態を悪化させることにつながるので、生活習慣を積極的に改善し、体重を増加させないで血糖コントロールを良好にすることが必要です。また、肥満糖尿病患者の場合、減量しただけでインスリン抵抗性が改善され血糖コントロールが良好になる場合も少なくありません。肥満症の場合まずは減量が一番の特効薬です。
糖尿病と肥満②
肥満糖尿病患者の治療の基本は食事療法と運動療法です。効果が十分見られない場合には薬物療法を併用します。肥満の原因は個々の症例で異なり、複数の要因が関与しますが、単純性肥満では生活環境をはじめ、食習慣や遺伝素因、さらに精神的要因の調査が重要で、その原因をそれぞれ除去、軽減するような根本的治療が必要です。体重減少すれば、多くの症例で糖尿病状態が改善しますので、減量指導は重要な治療法です。生活環境、食習慣にある原因を明らかにし、定期的に動機づけを強化させることが大事です。「ローマの道は一日にしてならず」で肥満は直ぐには改善しません。根気にやっていくことが大事です。
糖尿病と肥満③
肥満のある糖尿病患者では、食事、運動療法が不十分な場合には、インスリン、スルホニル尿素薬の併用により、体重がさらに増加することがあります。また、チアゾリジン薬も食事療法が遵守できない場合は体重増加が起こりやすいので注意を要します。メトホルミンなどのビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、選択的SGLT-2阻害薬は体重増加がありません。肥満のある患者にはこちらの薬が第一選択となることが多いです。減量後の体重を継続的に維持することは困難な場合も多く、減量目標は無理のないレベルとし、減量前体重の約5%前後を目安に徐々に行うのが良いでしょう。
糖尿病と肥満④
減量とその長期維持には行動療法の併用が有効です。肥満者では特に短時間に多くのエネルギーを摂取する早食いや衝動買いなどがみられ、また昼食後から夜間にかけての間食が問題となる例も多いです。望ましい食行動の確立のために、治療目標を設定し、過食行動の解析と評価を食事日記の記録、体重記録の測定を通して行います。食行動の変容を維持させるには動機づけを定期的に行うなどの行動の強化が有効です。