糖尿病とコレステロール
糖尿病とコレステロール①
糖尿病患者では非糖尿病患者に比べて心血管疾患の発症が2~4倍多く、そのうち冠動脈性心疾患に罹患した場合、予後が悪いことが明らかになっています。糖尿病患者の心筋梗塞発症頻度は非糖尿病患者の5倍以上で、すでに心筋梗塞を起こしたことのある非糖尿病患者の心筋梗塞再発頻度とほぼ同等であるという報告もあり、糖尿病患者は心臓病を患いやすいです。高コレステロールは糖尿病患者が心疾患を発症するリスクを増大させます。高コレステロール200mg/dl以上ではその値が高くなればなるほど心血管障害の発生が増加します。悪玉といわれているLCL-Cでは160mg/dl以上の糖尿病患者においては100mg/dl未満の患者の3.7倍、心血管障害が起きやすいという報告があります。このように糖尿病患者においては心疾患が起きやすく、コレステロールが高いとなおさら起きやすくなるとういうことがわかってきました。
糖尿病とコレステロール②
コレステロールを低下することによって、実際に糖尿病患者の心血管疾患の発症が抑制されることが、様々な臨床実験から明らかにされました。コレステロールを下げることによって約30%、糖尿行患者の心血管疾患の発症リスクが抑えられたとのことです。また、さほど悪玉コレステロール値が高くない糖尿病患者でも、コレステロールを下げることによって、心血管疾患の発症が抑制されたとの報告もあります。このように糖尿病患者においてコレステロール値を下げることは心血管疾患の予防において大切です。
糖尿病とコレステロール③
治療としてまずライフスタイルの改善があげられます。食事療法による肥満の改善と運動には、直接的、また、間接的にも高脂血症を改善させる効果があります。食事療法としては、コレステロール摂取を1日300mg以下にするようにします。それでもコレステロールが高い人は1日200mg以下とします。コレステロールを多く含む食品として、卵黄、魚卵、レバー、モツがあげられます。特に卵黄(鶏卵)は1個に250mg前後のコレステロールが含まれています。食物繊維(野菜)はコレステロールの排泄を促しますので、しっかり摂取しましょう。脂肪の摂取は摂取エネルギーの25%以下とします。動物脂、植物油、魚油にはそれぞれ異なった脂肪酸が含まれており、動物脂には飽和脂肪酸、植物油や魚油には多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。飽和脂肪酸は血中コレステロールを上昇させ、多価不飽和脂肪酸は低下させる作用があります。また、オリーブ油やなたね油に多い一価の不飽和脂肪酸も血中コレステロールをやや低下させる作用があります。これらの脂肪酸をバランスよくとることが大切で、コレステロールの高い人は植物油や魚油を多めにとりましょう。
糖尿病とコレステロール④
次に薬物療法が挙げられますが、悪玉であるLDLが高い場合、スタチン系薬剤が使われます。強力なLDL低下作用があり、使用上の安全性も高く、第一選択薬に位置付けられています。スタチン系薬剤が使用できない場合や、中性脂肪が高値の場合、善玉であるHDLが低い場合、フェノブラート系薬剤が使用されます。この薬を使用する事で糖尿病患者の心筋梗塞の発症が予防されることが証明されました。また、糖尿病の合併症である網膜症や、腎症の発症を抑制する事も証明されました。この2種類の薬を併用することはできません。横紋筋融解症という重篤な合併症が引き起こされる場合がありますので我が国においては併用は禁忌になっています。